平成26年4月より呼吸器外科部長として赴任して参りました。
呼吸器外科と申しましても、馴染みの無い方が多いかと思いますが肺、気管支、胸壁などの呼吸器疾患の外科的治療に取り組む科です。
・近年増加している肺癌
・若年者から高齢者まで幅広く発症する気胸などの嚢胞性疾患
・縦隔腫瘍、転移性肺腫瘍、胸壁腫瘍など腫瘍性疾患
・膿胸や胸膜炎,下降性壊死性縦隔炎など炎症性疾患
最近は術後の疼痛が少ない胸腔鏡手術が主流となっており、身体に与える負担を軽減した低侵襲手術を心がけています。
気胸に対してはもちろんのこと、肺がんに対しても、適応のあるものには完全胸腔鏡下手術を行っています。
肺がんの治療方法は手術だけではありません。進行してしまった肺がんに対しては呼吸器内科、放射線科と連携し、術前後の抗がん剤投与や放射線療法を組み合わせて治療を行い、治療成績の向上を目指します。
ご本人様、ご家族様に対しては、検査や治療方針について担当医である私から充分な説明を行い、ご理解をいただいた上で、納得いただける診療を心がけています。
北播磨総合医療センター呼吸器外科は2014年4月に開設いて以来4年を経過しました。その間、当地域における呼吸器の外科的疾患に関する専門施設として活動して参りましたので、その一端をご紹介いたします。
当科開設の翌年から始まった4科合同の肺癌カンファレンス(呼吸器内科、呼吸器外科、放射線科、病理診断科)は2017年の9月に第100回を迎えました。このカンファレンスでは昨年から本院の健康管理センター長 足立秀治先生(放射線科、兵庫県立がんセンター前院長)が加わり、以前から呼吸器グループアドバイザーとして在籍している坪田紀明先生(呼吸器外科、兵庫県立がんセンター名誉院長)と共に様々な呼吸器疾患に対する論議を重ねています。尚、その中の一部の症例は年4回発行CPCレポートにまとめられ、次のとおり掲載しておりますのでご覧いただければ幸いです。
今後も患者さんに一人一人に最も適し、且つエビデンスに基づいた治療法を求めてまいりたいと考えています。(2018.5 部長 髙田昌彦)
当科における手術件数は4年を経過した本年4月の時点で合計287例になりました。この内、原発性肺癌に対する手術件数は134例で、術式別頻度を図1に示しています。 この内、症例に応じて積極的に採用しているのは胸腔鏡下の低侵襲手術は、肺葉切除96例中の85例(86.7%)に達しています。現在の所、手術に関連して、術後90日以内に亡くなられた方はおられません。図2には肺癌以外の他疾患の疾患別手術数を示します。
図1
図2
本センター開設以来の論文発表、学会発表は以下のとおりです。
論文発表
肋骨に発生した骨軟骨腫の1例 日呼外会誌 2015;29:37-41
原発性か転移性かの判断に苦慮した肺絨毛癌の1例 肺癌 2016;56:268-72
多彩な合併症と播種再発を繰り返した浸潤性胸腺腫の1例-23年間の治療記録 日呼外会誌 2017;31:667-74
肋骨原発骨巨細胞腫の1例 胸部外科(南江堂) 2018;1:156-9
学会および研究会発表
肺絨毛癌の1手術例 第32回日本呼吸器外科学会総会(高松)2015.5
肺絨毛癌の1手術例 第102回日本肺癌学会関西支部会 2015.7
術後補助化学療法に苦慮した大腸内分泌細胞癌・肺線癌の同時性重複癌の1例
第56回日本肺癌学会学術集会(横浜)2015.11
異時性、同時性重複癌として両側乳癌を有する肺腫瘍に対し右S1+2区域切除を施行した1例
第57回日本肺癌学会学術集会(福岡)2016.12
早期大腸癌と同時性に確認された径3㎜の肺腫瘤に対する治療経験
第104回日本肺癌学会関西支部会 2017.2
左肺不全分葉症例における葉間切離の工夫(葉間吊り橋法)
第36回近畿胸腔鏡研究会 2017.2
術前の画像情報がV6aの以上走行 -破格V2への環流- を明らかにした右下葉肺癌の1手術例
第34回日本呼吸器外科学会総会(福岡)2017.5
たこつぼ型心筋症を合併した難治性左気胸に対する手術に、PCPSが有用であった1例
第60回関西胸部外科学会学術集会 2017.6
3年間の経過観察で浸潤癌に進展したと判断し、区域切除を行った肺上皮内腺癌の1例 -新分類(2017)の病期判定に及ぼす影響ー
第105回日本肺癌学会関西支部会 2017.6
CABG後のグラフトに囲まれて発生した胸腺腫の1手術例 -術中のグラフト損傷回避に対する工夫-
第70回日本胸部外科学会定期学術集会(札幌) 2017.9
氏名 | 補職名 | 卒年 | 資格等 |
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髙田 昌彦 (たかた まさひこ) |
部長 呼吸器センター副センター長 |
1995 |
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藤林 祐介 (ふじばやし ゆうすけ) |
医員 | 2017 |